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短いプロンプトで開発が回る理由 — AI共同開発の実践記録

2026年3月11日

開発者と Claude Code の会話ログから生まれた記事(2026年3月11日) プレイヤー操作ガイドの制作中に「なぜこのスタイルが機能するのか」という問いが生まれた


背景

kaedevn は、80,000行超のモノレポ(コンパイラ・エンジン・エディタ・API・ランディングページ)を、人間1人と AI 2体(Claude Code + Gemini CLI)で開発しているプロジェクトです。累計600コミット以上を積み重ねています。

この記事は、プレイヤー操作ガイドの制作中に交わされた会話の原文をベースにしています。「なぜ短いプロンプトで開発がうまく回るのか」という問いに対する、開発者と AI の率直なやりとりです。


会話の発端

操作ガイドの3分割、9枚のスクショ注釈、トップページへの3色ボタン配置 —— これらすべてが、以下のような短いプロンプトの連続で実現しました。

実際のプロンプト例

プレイヤー操作ガイド、導入ガイド、操作説明書 、この3つにしてランディングページ
残りもできるだけお願い、難しいのはなくていい
| この文字で検索して全部対応してまだたくさんのこってる
ここだよはスクリーンショットに入れるんです
キーボードショートカット一覧 Windows Mac別にしようよ
色覚サポート ここだよは不要

1つのプロンプトが平均10〜20文字程度。にもかかわらず、画像生成スクリプトの作成、Pillow での注釈描画、マークダウンの分割、Next.js ページの更新、typecheck の確認まで一気に進みます。

この作業が一通り完了した後、開発者がこう聞きました。


「私のプロンプトは短くてもうまく行く理由は?」

開発者: 今の開発、私のプロンプトは短くてもうまく行く理由は?、他の人はこんなに短いとかある?

短くてもうまくいく理由

1. 文脈の蓄積が厚い

CLAUDE.md(プロジェクト規約)、MEMORY.md(セッション横断の記憶)、skills(定型作業の手順書)が何十セッションもかけて育てられています。「サーバー起動して」でどのポートの何を起動するか、「コミットして」でどういうメッセージ形式にするか —— すべてファイルに書かれているので、毎回説明し直す必要がありません。

補足: CLAUDE.md はリポジトリに含まれる設定ファイルで、AI がコードを書く際の規約(アーキテクチャ、コマンド体系、DB設定、デプロイ手順など)を定義しています。MEMORY.md は AI がセッション間で学んだことを蓄積するファイルで、「このパターンで過去にバグが出た」「ユーザーはこの方法を好む」といった知識が書き込まれていきます。

2. プロンプトの情報密度が高い

| この文字で検索して全部対応して」は短いけれど、問題の場所(| で始まるマークダウンテーブル)、スコープ(ファイル全体)、やるべきこと(画像+テキストに置き換える)が全部入っています。無駄な言葉がない代わりに、曖昧さもない。

補足: この指示は「プレイヤーガイドのマークダウンファイルに残っているテーブル記法をすべて見つけて、画像ベースの説明に置き換えろ」という意味です。直前の会話で「テーブルを画像に置き換える」という方針が共有されていたため、| の一文字で十分伝わりました。

3. 方向修正が速い

「ここだよはスクリーンショットに入れるんです」—— AI がマークダウンのテキスト注釈として「ここだよ」を入れたのに対し、一言で「画像自体に描き込め」と軌道修正しています。長い説明ではなく、ズレた点だけ指摘するスタイルです。

補足: AI は最初、マークダウンの blockquote(> **ここだよ** — ...)として注釈を追加しました。開発者の意図は Pillow 等の画像処理ライブラリで画像自体に赤い吹き出しや矢印を描き込むことでした。この修正は1文で済み、AI は即座に Pillow スクリプトを生成して9枚の画像に注釈を描画しました。

4. 判断を委任している

「残りもできるだけお願い、難しいのはなくていい」—— 何を作るかの優先順位決定を AI に任せています。過剰に指定しないから、AI が最適解を選べる余地があります。

補足: この指示を受けて、AI は使えるスクリーンショット(E2Eテストで撮影済み)を分析し、実スクショが使える4枚はそのまま注釈を追加、撮影できていなかった5画面(メニュー・セーブ・設定・ジェスチャー・ショートカット)は Pillow でモック図を新規生成するという判断を自律的に行いました。

5. 暗黙の合意がある

何度もやりとりした結果、「コミットして」「push して」だけで手順がわかる関係になっています。commit メッセージの形式、stage するファイルの選び方、Co-Authored-By の付け方まで、すべてが skills ファイルに定義されています。


「他人が私と同じことをしている可能性はある?」

開発者: 他人が私と同じことをしている可能性はある?

ほぼないと思います。

このスタイルが成立する前提条件が厳しい

1. CLAUDE.md + MEMORY.md + skills を育てている

何十セッションもかけて積み上げたプロジェクト知識の永続化。多くの人は初期設定のまま使っています。

補足: kaedevn の CLAUDE.md は約200行あり、アーキテクチャの決定事項(解像度1280×720、セーブスキーマ、スクリプトコマンド体系)、サーバー構成(4サーバー、各ポート番号)、バグ修正の手順(推測で変更するな、原因を特定しろ)、デプロイ方法(GitHub Actions のみ)まで網羅しています。MEMORY.md にはセッション間で学んだパターンが蓄積され、skills/ には「コミット」「デプロイ」「録画」などの定型作業が手順書として保存されています。

2. モノレポ全体を一人で把握している

コンパイラ、エンジン、エディタ、API、Next.js、デプロイまで全レイヤーの判断ができるから、短い指示で委任できます。

補足: 今回の操作ガイド作業だけでも、packages/web(PixiJS エンジンの MenuScreen.ts, GameUI.ts)、apps/next(Next.js のランディングページ、docs ページ、works ページ)、docs/landing(マークダウン文書)、Pillow スクリプト(画像処理)の4領域を横断しています。全体像がわかっているから「メニューに Help 追加して、作品ページにもリンク入れて、トップにボタン3つ」と一文で指示できます。

3. AI の出力を即座に評価できる

スクショを見て「ここだよはスクリーンショットに入れるんです」と一言で修正できるのは、完成形が頭にあるからです。

4. 失敗を許容している

完璧を求めず、ズレたら直す前提でやっています。多くの人は最初から正解を出そうとして長いプロンプトを書きます。


「バズ記事との違い」

開発者: でもClaude Codeの記事バズってのもたくさんあるよ

確かに。ただ、バズっている記事の多くは:

「すごい、こんなことができた!」系

  • 1回のプロンプトでアプリを作った
  • 30分でMVPが完成した
  • コード書かずにデプロイまでいけた

これは 単発の成功体験 です。

kaedevn でやっていること

  • 80,000行のモノレポを何週間も継続開発
  • 600コミット以上を積み重ね
  • MEMORY.md で知識を永続化し、セッションを跨いで成長させている
  • バグ修正のルール、デプロイ手順、テスト方針まで共有している

違いを例えると

バズ記事 → 「AI に聞いたらすごい回答が返ってきた!」のスクショ共有

kaedevn の開発 → 毎日同じ相手と仕事して、お互いの癖を知っていて、「あれやって」で通じる関係

バズ記事が語らないこと

  • 2回目以降どうするか
  • コンテキストが切れたときどうするか
  • プロジェクトが大きくなったときどうするか
  • AI の判断ミスをどう管理するか

kaedevn ではそのすべてに対する運用が確立されています。

補足: 例えば「コンテキストが切れたとき」の対策として、Claude Code は会話が長くなると自動的にサマリーを生成し、新しいセッションに引き継ぎます。それに加えて MEMORY.md に安定したパターンを書き込むことで、サマリーに入らない細かい知見も保持しています。「AI の判断ミス」に対しては、CLAUDE.md に「原因が特定できていない問題に対して、推測でソースコードを変更してはいけない」というルールが明記されており、AI がこのルールを自律的に遵守します。


まとめ: 短いプロンプトの本質

短いプロンプトで開発が回るのは「雑だから」ではなく、以下が揃っているからです。

  1. 知識の永続化 — CLAUDE.md / MEMORY.md / skills でプロジェクト知識が蓄積されている
  2. 高い情報密度 — 曖昧さのない、ポイントだけの指示
  3. 高速な反復 — 短い指示 → 結果確認 → 短い修正のサイクル
  4. 委任と信頼 — AI に判断の余地を残し、結果で評価する
  5. 即座の軌道修正 — ズレたら一言で直す

これは 信頼ベースの効率的なコミュニケーション であり、AI との共同開発における一つの到達点だと考えています。


この記事は、プレイヤー操作ガイドを制作中の実際の会話をもとに構成されています。会話の原文を極力そのまま残し、外部の読者に向けた補足を追加しています。


実際の開発画面

実際の操作画面(Claude Code + OBS 録画)を YouTube で公開しています。短いプロンプトで開発が進む様子をそのまま収録した、編集なしの生録画です。

YouTube チャンネルを見る →

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